先日googleの口コミで当院に対して「 器具の消毒がおざなりになっているのでは?と疑っている」という投稿がありました。
まさに寝耳に水で、そんなことを疑われてしまうと医院の存続にかかわります。
「消毒はやっている」という前提で患者さんはお越しになるわけで、いわば紳士協定のようなものです。
正直申しましてブログで書くような話なのか迷いました。
一つの口コミに過剰反応していると思われるかもしれません。
しかし、金子耳鼻咽喉科を受診される患者さんが、その口コミをみて不安に思われるのは良くないと考えました、
皆さんに安心して受診していただく為、当院の感染対策を記載させていただきます。
当院の滅菌洗浄機器
医療用器具洗浄機ジェットウォッシャー
器具の洗浄・消毒の為、当院はドイツ・ミーレの医療用器具洗浄機を導入しています。
食器洗浄機ではありません。医療専用の器具洗浄機(PG 8592)です。
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診療所で導入しているところは殆どありません。
多くの診療所では手洗い洗浄です。
もっと大型の機種はあります。
しかしスペース等の理由で巨大な機種を入れることは困難です。
令和2年1月現在、現実的に診療所で導入できる一番良いものを選んでいると自信を持っています。
大学病院クラスの病院で導入されている機器というと説得力があるのでしょうか、、、
専用の洗浄機のため、実際確実に汚れを取ってくれます。
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オートクレーブ滅菌機
写真の右側がオートクレーブ滅菌機
湯山のYS-A-C006J
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高圧高温で行うのがオートクレーブ滅菌機で、ほぼ全生物を死滅させることができると言われています。
滅菌温度は、135/121/115℃を選択できます。
EOG滅菌機
先ほどの写真の左がEOG(エチレンオキサイドガス)滅菌機
東邦のケミス・クレーブCT-380
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鋼製小物と言われる金属の製品や、硬性内視鏡は先ほどのオートクレーブで滅菌できますが、プラスチック製品などは高温に耐えられません。
そのようなものをこのガス滅菌機を使用して滅菌します。
半年に一度の作業環境測定が必要で、当院でも行っています。
オートクレーブ、EOGがあるため、全ての医療機器・材料を外注することなく当院で滅菌することが可能です。
軟性内視鏡・洗浄消毒機
普段外来で頻繁に使う、軟性内視鏡の洗浄機です。
seiken社のエスパルIIIbです
内視鏡の挿入部だけでなく、医師が操作する部分も含めて丸洗いできる機種です。
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挿入部だけを洗浄する機種もありますが、それでは中途半端だと考えています。
内視鏡洗浄ガイドラインでも操作部を含めて全部洗うことが推奨されています。
挿入部だけ洗浄機、操作部は手洗いだと洗浄がおろそかになる可能性があります。
実際この機種で洗浄すると、操作部がさらさらして汚れが取れているのが実感できます。
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この機種を導入している医院は増えてきましたが、2台持っている医院は珍しいようです。
1台だけですと、洗浄が間に合わないときに「手洗い洗浄」になってしまうかもしれません。
それでは、せっかく高性能な洗浄機器を入れた意味がありません。
そのために2台導入しています。
外来中は2台ともフル回転していますが、それでも間に合わないことがあります。
そのような時でも、「手洗い洗浄」にならず問題なく診察が行えるように多めに軟性内視鏡を購入しています。
合計8本。特殊なものも含めると合計10本あり、用途によって使い分けています。
余談ですが、当院の軟性内視鏡の環境は令和元年の耳鼻咽喉科専門医講習会で紹介されました。
院内の環境に関して
準備室の水栓に関して
医院の洗浄・準備室にはシンクを2つ設けています。
天板の高さやシンクの深さは重要で、洗浄者への「水はね」を防止する設計をしています。
「水はね」は、あまり重要視されず感染対策として話題に上ることはありませんが、私は鼻汁などの人の体液が付いたものを洗浄する以上、そのような対策は必要であると考えています。
また体液が付いたまま、水栓を触ることも清潔とは言えません。
その対策として、TOTOのフットスイッチユニットを導入しています(図の矢印)。
これにより水栓をさわることなく、水をon/offできるようになっています。
ここまでする必要はないのかもしれませんが、私は必要と考えています。
院内環境整備に関して
院内の環境整備は大変むつかしい問題です。
診療所は病気の患者さんが来られますので、ある意味感染症の温床です。
院内感染対策で上記のような洗浄滅菌器具をそろえていますが、床やドアなどいたるところに感染源はあるわけです。
きれいにしたらいいんじゃないのか?というのは簡単ですが、
実際はそれほど簡単ではありません。
そのため他施設と合同でアイデアを出し合い、勉強会を開催したりしています。
基礎的な知識はもちろんですが、医院スタッフの感染対策に対する意識が重要と思います。
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金子耳鼻咽喉科では、
・エタノール
・第4級アンモニウム塩含有の医療施設用洗浄剤
等を使用して普段の清拭を行っています。
第4級アンモニウム塩 について(PDF)
血液もよく落ち、洗浄できる場所を選ばないので環境整備に大変有用です。
下記薬剤を使用しています。
普段の清拭にはサラヤのサラサイド
床などの広範囲の清拭には花王の医療施設用クリンキーパー
当院がキッズスペースを設けていない理由
患者さんにアンケートを取ると「キッズスペースを設けてほしい」という意見が必ず出ます。
診療所のキッズスペースに関しては様々な考え方があるとは思います。
その点を理解したうえで、あえて申し上げますと、キッズスペースは患者間感染の原因になると私は考えています。
特に感染症を扱う科目(もちろん耳鼻科を含みます)においては。
このような観点からあえてキッズスペースは設けていませんし、これからも作る予定は全くありません。
まとめ
上記のように診療所で考えうる対策を徹底的に行い、またアップデートしています。
当院は手術をしますので、他の耳鼻科より人の血液や鼻汁などの体液をはるかに多く扱います。
ですので、 当院では洗浄消毒滅菌に必要なモノ・機器は積極的に導入しています。
患者さんにはなかなか見えない診療所の裏側です。
診察に使っている器具は一見しただけでは、清潔なのか不潔なのかわかりません。
来院される患者さんに安心していただく為にも、そして何より診療所のモラルとして、このような対策は当たり前であり重要です。
信頼して来ていただいている患者さんへの、私からの約束です。
追記:口コミに思う事
患者さんによって医院の印象や、受けた医療への受け取り方は様々だと思います。
私は残念ながら聖人君主とは程遠い人間です。
来る方全員が120%満足、、、とは、なかなかいきません。
それに、100%治る医療なんてものは存在しません。
実際、厚生労働省の医療広告ガイドラインでは、「100%治ります!」といったうたい文句は禁止されています。
なぜなら100%治ることはないからです。
我々医師はそれを前提として、治る可能性が高い治療法を選択しますが、
病気というものは、医療機関に行かなくても「勝手に治る」ものが大多数です。
では勝手に治らない病気をどうしようか?
そこに専門医の知識・経験・技術が必要になります。
一人一人訴えの違う一般外来は真剣勝負で、思考回路はフル回転しています。
外来が終わった後は、いつも頭の中がヘトヘトです。
他の医院の院長や、飲食店などの経営者などと話しても、口コミに悩んでいる話はよく聞きます。
真剣に取り組んでいるにもかかわらず、悪い口コミを書かれたら本当に落ち込みます。
「真剣さが足らなかったのかな」「人徳がないんだわ」「そんな感じはなかったのにな」
仕事に真剣な方であればあるほど、心を痛めてため息をついておられます。
インターネットの口コミというものは大変厄介で、一方的な意見になりがちです。
本来あるべきコミュニケーションが感じられません。
よかった!と思ってもなかなか投稿はしないものです。
実際、診察室ですごく感謝していただいても、投稿まで至ることは稀です。
多くの場合、何らかの理由で怒り心頭な状況で投稿することが多いと推察できます。
しかし、一度書き込んだことは、なかなか消せるものではありません。
書き込むという事は責任を伴うという認識が、世の中希薄になっている様な気がします。
人それぞれに真剣に打ち込んでいる人生があり、そして家族があり。
そのような想像をすると、私は簡単に口コミは書けません。
これからどんな方向に世の中は進むんだろうか、、、
医療人の立場から見ると、インターネットの口コミは医療の委縮を呼びそうな気がしてなりません。
委縮した医療では、いい医療が提供できなくなってしまいます。
今回頂いた口コミも、個人的には残念でならず心が折れそうになります。
直接お話していただいたらよかったにな、と。
難しい世の中だな、、、と本当に思います。
院長 金子敏彦(かねこ としひこ)