長かった緊急事態宣言が解除されます。
大阪では新型コロナ新規感染者0人という日もあり、日常が徐々に回復していると感じます。
金子耳鼻咽喉科もまだ全開ではありませんが、徐々に通常診療の体制に戻しています。
多くの診療所で大幅な減収となり、耳鼻科が最も影響を受けたそうです。
しかしながら「どうしよう?」と悩んでばかりでは何も始まりません。
「ではどうするか?」
我々医師は大学でも病院でも医療の勉強はしていますが、「経営」トレーニングはしていません。
しかし診療所の院長には、「医療」も「経営」も求められます。
「良い医療」をしないと、経営は良くならないし、
「良い経営」をしないと、良い医療をするのは難しい。
両方とも、とても大事です。
良かったこと
感染症に対する知識がとても増えた
一つの病気に関する研究が、これほど短期間の間に進んだことは過去にないと思います。
とても勉強になっています。
・質の高い科学的な知見をとても素早く入手することができる、ネット社会の素晴らしさ。
・同時に、一見正しそうに見えるデマまがいの情報も素早く出回る、ネット社会の恐ろしさ。
実際にはデマまがいの情報の方が圧倒的に多く出回っています。
正しい知見を得ることが「簡単」かつ「難しい」
全国の多くの先生と交流が増えた
これはとても良かった事です。
新型コロナへの対策は、しなければならない事が沢山あります。
先に述べたように、本物の情報を得るのは容易ではありません。
残念ながら「飲みながら情報交換!」ができないので、ネット、メール、電話を駆使して意見交換。
「オンライン飲み会で息抜き」ともならず、自然と新型コロナの話題になります。
振り返ってみれば、ここ4カ月ほどコロナの議論ばかりしている気がします。
そのおかげで、頭はコロナでパンパンですが、色々勉強になりました。
今後、皆さんと学会や研究会でお会いするのが楽しみです。
オンライン会議
情報交換のために、まったくやったことのなかったオンライン会議をたくさん開催しました。
昨日もやりました。
私は、コンピュータが平均レベルよりは詳しいので、段取りをしてくれという依頼が沢山あります。
その立場を利用して(?!)今後のため、様々なオンライン会議システムを試しました。
コロナの影響でソフト会社が時間制や人数制限を緩和してくれているのは、有り難い。
ZOOMは直観的な操作感に優れていますが、Microsoft teamsがここにきてクオリティーを上げてきています。
PCに詳しくない人でも直観的に使いやすいという点では、軍配はZOOM。
でも、最近はteamを使う事が多いかな。
無料でも時間制限がない事はとても有り難い。
こうして、さらに知識は増えていきます。知識が増えるのは楽しい事です。
医院を移転しておいてよかった
昨年の8月に移転しましたが、タイミングが良かった。
もし今年移転だったとしたら、、、建築すること自体が難しかったかも。
感染対策も前の医院だったら、今のクオリティでできたかは疑問です?
先日まで行っていた院内トリアージは最たるものです。
症状によって待合場所を変えますので、スペースのない診療所ではなかなか難しい。
アルコールなどの消毒薬や手術の防具も、保管場所があるからストックできています。
旧クリニックのままだったら消毒液不足にあっという間になったと思われます。
そうなると診察の継続が難しかったかもしれません。
耳鼻咽喉科の未来予想!?
アフター・コロナの耳鼻咽喉科がどうなるのか?勝手な予測をしてみました。
10年後、この記事をみてどんな感想を持つことやら。
病院の真の実力が問われる
ハッキリしていることは、今後同じような感染症が流行すれば、患者さんの受診は確実に減るという事です。
こちらから「患者さんの受診抑制」を促しているのですから受診が減って当たり前です。
病気というものは大半が勝手に治ります。
では治らないものをどうするのか?そこにプロである我々の存在意義があります。
アフターコロナでは、患者さんもそのような認識の方が増えると思います。
常々、耳鼻咽喉科診療所の医療は画一的と言われてきました。
・待合室は満員。診察をどんどんまわして、ネブライザをして終了。
・治療内容がイマイチ理解できず、延々と通院が続く。
ホームページにはよく「的確な診断」「丁寧な治療」と言った文言が並んでいます。
しかし、そんなことは当たり前の話で売り文句にもなりません。
「では他院との違いは何?」が、より一層大事になるのではないでしょうか。
医療機関によって治療の目的は様々です。
本質的な事をいうと、耳鼻咽喉科の場合は「患者さんを治す」のが目的の診療所が殆どです。
金子耳鼻咽喉科の特徴は「診断を重視」し、治療に「手術」という手段を持っている事です。
これがベストと言っているわけではなく、単に私の出来ることをやっているだけです。
しかしこれからは、「専門分野を生かした開業」が耳鼻咽喉科の診療所に求められるのではないでしょうか。
たとえば、めまい専門、音声専門、難聴専門、在宅嚥下リハビリ専門、画像を見せる等々。
令和2年4月より、「大きな病院への紹介状なし受診」のハードルはさらに上がっています。
逆に言えば、高い専門性を持った診療所へのニーズが高まると予想します。
無駄な治療があぶりだされ、真に必要な医療行為とは何か?
コロナ騒ぎは今後の医療を考える、とても重要な転機なのではないでしょうか。
完全予約制が多くなる?
以前から完全予約制の利点を強く強調していましたが、同調していただける医院は少数でした。
しかし、コロナ騒ぎをきっかけに「完全予約制の運営」について聞かれることがとても多くなりました。
当院は開院時は「順番予約制」から始まり、2017年に「完全予約制」に移行しました。
両方を経験したから見えてくる、両者のメリット・デメリットがあります。
どなたが来院されるかはわからない順番予約と違って、事前に来られる患者さんの予測がつくこと。
これは感染対策としてはとても有効です。
この1-2カ月は、こちらからお電話して電話再診の形をとったことも多かったです。
患者さんとしても、「サッと行って、サッと帰りたい」でしょう。
完全予約制はこの点で圧倒的に良い。
朝一番に順番取りをしなくてよいし、待合室も混雑しにくい(密になりにくい)。
コロナの時期でも「完全予約制」だから来院したという患者さんも多かったです。
密にならず、患者さんも予約時間に行けばよい。
こちらとしても、しっかり時間を取って診察できる。
これからは、完全予約制の耳鼻咽喉科が増えるのではないでしょうか?
キャッシュレス決済
これは確実に変わると思われます。
現金を扱うのが嫌という人が多くおられたようです。
中には現金を洗ったりしていた店舗や診療所があったとか。
これは明らかに行き過ぎ。
きりがないし、仕事が増えるだけです。手を洗えばよいのです。
とはいえ、現金を下ろす必要もないし、使う必要もないキャッシュレス決済が今後増えるのは間違いありません。
金子耳鼻咽喉科の診察料のお支払いでもドンドン利用してください!
オンライン診療
LINE、Skypeなどの「ビデオ電話」を使っての診察。
一応セッティングはしていますが、耳鼻科の病気は体の中にあるので、なかなか難しい。
診断がゴッソリ抜け落ちてしまいます。
とはいえ、過去に受診歴があり、だいたい病状がわかっている方になら使える手です。
しかし、中を見ないと不安がちょっと残ります。
病気を見て判断することの多い耳鼻咽喉科での普及は難しいかな、、、
他科では有効な事もあると思います。
まとめ:残るもの残らないもの
何事にもバランスが必要です。
色々な事が劇的に変わることが予想されます。
が、オンライン診療など利便性を追求しすぎると、医療の質が低下する懸念があります。
極端な方向に行きかけて、やや戻るのではないでしょうか?
私はマスコミが曲解して伝えることの恐ろしさを感じています。
新型コロナウイルスはinfodemicな感染症ともいわれます。
infodemicとは、SNSなどのメディアを通して「デマ」や「不正確な情報」が爆発的に広がることをpandemicにかけて作られた言葉です。
リンク:Lancet の論文「How to fight an infodemic」
新型コロナウイルスの情報は、本来とても慎重に内容を吟味して伝えるべき事です。
多くの方の日常生活、仕事、国の在り方等と直接関わる、大変デリケートな内容です。
そのような事柄を安易に、煽る様に伝えるテレビ。
結論ありきの無責任な編集、無責任なコメントのオンパレードは、様々なところで弊害を生んでいます。
このような状況では、専門教育を受けた医師でも本当の情報を得るのは簡単ではありません。
医療関係者であるなし関わらず、一部の几帳面な方々にとって、とても大きなストレスになっています。
報道の在り方を考えるのは難しいのかな、、、何とかしてほしい。
感染対策のリンク
最近見たHPで、感染対策の参考になると思うリンク上げておきます。
シンプルに3つだけ。ぜひ参考になさってください。
ポイントを押さえれば、感染対策自体は難しいことではありません。
神経質になりすぎると良い事がありませんよ。
・高山義浩先生のページ(新しい生活様式についてコメント。何事もほどほどに)
・岩田健太郎先生のコラム(手洗いが大事。無意味な対策は疲弊するだけです)
・忽那賢志先生のコラム(空間除菌はダメ。逆に病気になることもありますよ!)
このような大きな事があったあとには、世界中の物事が変わります。
皆が幸せに生きられる世の中になりますように。
良い耳、良い鼻で豊かな人生を。
院長 金子敏彦(かねこ としひこ)