手術の内容を説明する際、「どんな道具を使ってやるんですか?」という質問をよく受けます。
手術では多種多様な道具を使うため、一言でのお返事は実際とても難しいです。
先日、新入職員教育用に、金子耳鼻咽喉科で使っている鉗子等を撮影する機会がありました。
質問への補足もかねて、一部紹介したいと思います。

鉗子のセット組

大きく分けて以下のようになります。
これらを滅菌パックに入れて滅菌消毒して用意しています。

  1. 手術で使う事が決まっている鉗子類の「セット」
  2. 時々使う鉗子を個包装した「単品」
  3. 鉗子以外の特殊な機器

上記のうち「セット」されたものは何種類かあり、例えば
「鼻手術基本セット」「副鼻腔手術セット」「前頭洞セット」「前弯矯正セット」「耳手術セット」「小手術セット」等々といった感じです。

鼻中隔矯正術などの鼻腔形態改善手術を行う際には「鼻手術基本セット」のみ。
簡単な副鼻腔炎の手術の時は「 鼻手術基本セット」と「副鼻腔手術セット」の両方を使うといった具合です。
さらに前頭洞を触る時は 「前頭洞セット」 を出したり、特殊な鼻中隔手術の時は 「前弯矯正セット」 を出したり。
更に特殊なケースでは「単品」の、より専門に特化した鉗子を使用します。

ちなみに「鼻手術基本セット」「副鼻腔手術セット」 は使用頻度が多いため、それぞれ2セットずつ用意しています。
いくつかドド~ンと公開いたします。

セットを一部紹介

鼻手術基本セット

鼻中隔湾曲症、肥厚性鼻炎、アレルギー性鼻炎等に対する、鼻中隔矯正術、下鼻甲介手術、後鼻神経切断術(翼突館神経切断術)といった手術ではこのセットを使用します。

副鼻腔手術セット

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)等に対する、内視鏡下副鼻腔手術の際には上記にこのセットを加えます。
バックワード鉗子等、職人さんの引退により現在では入手できない貴重な鉗子も含まれています。

前頭洞セット

副鼻腔の中でも開放に一番経験を要するのが、前頭洞(額の副鼻腔)です。
鼻の穴から額の空洞にアプローチするわけで、「強弯」といってかなり大きく曲がっています。
以前ブログで紹介した「前頭洞パンチ」は単品ですが、前頭洞の手術にはほぼ全例使うのでセットに入れた方がよいのかな?
前頭洞の場所のイメージも以前のブログを参照していただければ幸いです。

ちなみにこちらが前頭洞パンチ。
とっても有用ですが、高価でそしてよく壊れます。

副鼻腔手術の重要な器具

特殊な器具として副鼻腔手術には欠かせない、Medtronic社のマイクロデブリッダー(シェーバー)も紹介しておきます。
この器具のおかげで内視鏡下副鼻腔手術は効率よく出来るし、精度も格段にあがります。
これがなくては、日帰り手術は困難と言っても過言ではありません。
また機会がありましたら紹介します。
M5という一番新しいハンドピースで、金子耳鼻咽喉科では合計3本所有しています。

M5

実際の手術

「セット」「単品」「特殊機器」と一部ご紹介しました。
実際の手術となると、鉗子だけで出来るわけではありませんので、他にも色々な物が登場します。
看護師が手術がスムースに進むようにそれらを並べて段取りしてくれます。
手術開始前に用意している様子を写真に撮らせてもらいました。

私はこのような感じで、左手に内視鏡を持ちます。
「○○の鉗子頂戴!」と右手を差し出しているところですね。
慣れた看護師となると、手術の状況を見て、私が言うまでもなく適切な鉗子をスタンバイして渡してくれます。
※患者さんの許可を得て写真を掲載しています

まとめ

というわけで、「どんな道具を使ってやるんですか?」というご質問に、一言ではお答えしにくい事がお分かり頂けましたと思います。
紹介した他にも山ほど鉗子や器具を持っていますので、なかなかすべては紹介しきれません。

実はそんじょそこらの大病院よりも機械は充実しています(ちょっと自慢)。
病院となると機器を買うのに、申請して許可してもらってと中々手続きが煩雑だし、高価な器具は中々買ってもらえないものです。
「鉗子がない(買ってもらえない)為に手術が中途半端に終わってしまう」という事は実際にあり得る事です。
金子耳鼻咽喉科は私の医院ですので、欲しいモノ、必要なモノを自由に買えます。
この点でのストレスが全くない。
自院開業で手術をしているクリニックの最大のメリットだと思います。
仕事の道具にお金をケチるべからず。これ大事です。

院長 金子敏彦(かねこ としひこ)