副鼻腔炎の内視鏡手術では様々な数の鉗子を使います。
種類や角度、似て非なるものがたくさんあるし、術者によって好みもちがいます。
さて先日、愛用しているストルツの前頭洞パンチが壊れました。
金子耳鼻咽喉科Ear & Nose Clinicには手術用の鉗子類は潤沢にありますので、壊れても大概は別のものを使えば何とかなります。
しかし、「代わりのものがない」鉗子が私の中では2つあります。
その一つがドイツ・カールストルツ(Karl Storz)社の「前頭洞パンチ:パンチヘッド直径3.5mm」です。
先日、それが壊れたのを機会に他社メーカーの前頭洞鉗子と比較してみました。

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前頭洞(額の副鼻腔)を鼻内から開放するための鉗子で、この様に使います。

前頭洞パンチの先端比較

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一番上が愛用のストルツの前頭洞パンチです。


先端徹底比較(?)
1、私の「ストルツの前頭洞パンチ」です。
2、先端形状が似てますね。
3、先端が長くて頭蓋底(鼻腔の天井、脳の底)を突き破ってしまいそうです、、、
4、先端が小粒で作業が進みそうにありません。
というわけで実際の手術では1と2を比較してみました。
結論は、やはりストルツの前頭洞パンチ3.5mmが圧勝でした。
1と2の先端の見た目ほとんど同じなのになぜその差が出るのだろうかと考えてみました。

先端の動きの違い

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「ストルツ前頭洞パンチ」の他社との大きな違いは、挟み込んで組織を切除する部分にあります。
この動きが真逆です。
上:ストルツは上の「傘」の部分が固定され、下が動きます。
下:他社メーカーは下が固定で、上の「傘」の部分が動きます。

「ストルツの前頭洞パンチ」はヤクルトスワローズの応援で「傘」がそのままで、観客と球場が動いているようなものです(冗談です)。

動きの違いが使いやすさの差

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この手の鉗子の多くは組織を切除するとき指を閉じます。
その際、鉗子全体が「お辞儀」する傾向にあります(青矢印)。
お辞儀しないような鉗子の使い方を練習せよと書いている教科書もあります。
この辺は慣れなのですが、おそらく少し「コンマ1ミリ単位」でお辞儀しているのだと思います。

手術では切除する組織を「まず挟み込んで」パチンと切除します。
ストルツの前頭洞パンチは少々「お辞儀」しても「傘」がそのまま組織を固定して、下から「パチン」(黄矢印)。
他の鉗子はわずかに「お辞儀」した時に、挟み込んだ組織が逃げてしまいます。そして上から「傘」が降りてきても、逃げた組織を「パチン」とできず「グニャ」という感じ。「パチン」とするには、指を閉じながら、手首を上に上げる動作をしないとなりません。そうしないと組織を下から「おしあげ固定」出来ないため「パチン」と出来ません。
これは人間工学に逆らっている動きなのではないでしょうか?

ストルツの前頭洞パンチが最高

鉗子の使いやすさは仕上がりの綺麗さと手術時間に差が出ます。
当院は局所麻酔・日帰りですので手術を効率よくすすめる必要があります。
お値段定価33万円と安くはありませんが。鉗子1本で、手術のクオリティーが上がるなら安いものです。

というわけで結論としてはストルツの前頭洞パンチ:パンチヘッド直径3.5mm」は内視鏡下・鼻副鼻腔手術には必須と考えています。

院長 金子敏彦(かねこ としひこ)