4Kシステムのレビューはまだ?と聞かれつづけておりました。
ご期待にお答えして(?)ようやくストルツ4K内視鏡システムのレビューをいたします。
ありそうでなかった鼻副鼻腔内視鏡手術用4Kシステム、各社プチ比較です。
本体と同時に購入した4KモニターTM340のレビューはこちら
組み合わせることで、極めて素晴らしい手術環境になります。
今回は本体についてお話します。
主要4Kシステムの比較
耳鼻科で現在メジャーなところの4Kシステムは以下3つかと。
Karl Storz Image 1S 4U 独国(当院で採用)
Olympus Visera 4K 日本
Stryker 1688 AIM 4K 米国
Strykerの製品は学会で見たことはありますが、使用したことがありません。
オリンパスのシステムはデモにて使用経験があります。
Karl Storz | Olympus | Stryker | |
画像出力 | SDI(12G/3G)x1 (4K) Display Port x2 (4K) DVIx1 (HD) | Quad Link 3G-SDI x2 (4K) HD-SDIx2 (HD) | HDMIx2 (4K) |
本体サイズ (w x h x d)mm | TC 201EN (Basic Module: 写真上) 305 x 54 x 320 3.1kg TC 304 (4k Module: 写真下) 305 x 54 x 320 1.86kg | 330 x 113 x 420 5.44kg | 390 x 160 x 506 13.5kg |
カメラヘッド重量 (公称値) | 210g | 280g | 不明 |
本体がコンパクト
Karl Storzの製品は、光源などの機器と横幅や奥行きの整合性があり
縦に積むことですっきりします。
なんといっても、他社と比べて圧倒的にコンパクト。
奥行きが短く、場所を取りません。
ゴツゴツしてないせいか、すっきりとしています。
こちらオリンパス “Visera 4K”。サイズ感あります。
カメラヘッドが軽い
カメラヘッドは拍子抜けするほど軽いです。
写真のように硬性内視鏡をヘッドにつないで使います。
数時間の手術中、左手でほぼ持ちっぱなしです。
重いカメラヘッドでは左手に、じわりじわりと負担がかかります。
公称値ではStorzは210g、オリンパスは280g。(Stryker不明・・・)
実測していないので、本当の重量はわかりませんが、
オリンパスは思った以上に結構ずっしりとして重く感じました。
カメラケーブルもStorzは細くて柔らかく、取り回しがしやすいです。
この辺は慣れかな?
画像の特徴としてStorzは被写界深度が深く、オリンパスは浅い。
フォーカスが一度決まればStorzはそれほどフォーカスリングを回す必要がありません。
オリンパスは被写界深度が浅い分を、オートフォーカス機能をつけて補っています。画像のシャープさを求めたのかな?
ヘッドが重いのは、この機能のせいでしょうか。
背面端子に12Gがあります!
画像出力は、BNC(12G/3G)x1, DisplayPortx2, DVIx1
4K画像は12G-SDI, DisplayPortから出します。
何と言っても12G-SDIがあるのが素晴らしい。
これが他のメーカーにはありません。
4K出力にDisplayPortをお使いの方も多いと思いますが、
ぜひ12G-SDIをお試しください。画質が一段上がります!
ただ、手術の記録となると4Kは現実的ではありません。
一つの手術で50GBいや、それ以上のものすごい容量を食います。
私はDVIからハイビジョン出力して記録しています。
ここちょっと不満。
DVI出力と12G-SDIがもう一個づつ欲しい。
12G-SDIの何がすごいのか?
SDIのケーブルの形状・種類
見た目そっくりのSDIケーブルは1989年に規格化されています。
ざっくり言えばSDIは放送現場などで使われるプロ用の規格です。
端子の形状はBNCで、75Ωの同軸ケーブルが使われています。
ロックがかかり、長距離でも安定して信号が送れ、しかも安価。
ぱっと見た目は同じですが、SDIは進化しています。
SDIケーブルには下記のような種類があります。
12G-SDIではフル4K画像がケーブル一本で伝送できます。
- SD-SDI、SDTV画質(NTSC/PAL) 270 Mbps
- HD-SDI、HDTV画質(1080i 59.94) 1.483 Gbps
- 3G-SDI、プログレッシブHD(1080p 59.94) 2.97 Gbps
- 6G-SDI、4K解像度(4K 29.97p) 5.94 Gbps
- 12G-SDI、4K解像度 (4K 59.94p) 11.88 Gbps
各規格の後に記載のある “bps” は伝送速度です。
1秒間に何ビットのデーターを送れるかを表しています。
1Gbps=1秒1Gビットのデーターを送れます。
規格が上位になればなるほど性能が上がっています。
一目瞭然。約12Gbps伝送できるのが、”12G-SDI”です。
では、HD-SDIのケーブルを12G伝送に使ったらどうなるか?
実は映っちゃったりします。
しかし例えば長い距離だと、不安定になるという事です。
4K出力が可能なケーブル・端子
4K出力が可能なケーブル・端子を表にしてみます。
4K出力 | 12G-SDI | Quad Link 3G-SDI | DisplayPort | HDMI |
---|---|---|---|---|
コネクタ形状 | ||||
採用システム | Karl Storz | Olympus | Karl Storz | Stryker |
メリット | 細い 100mなどの長尺可能 ロックできる Quad 3Gに比べSDIケーブル1本でよい ケーブルが安い | 100mなどの長尺可能 ロックできる ケーブルが安い | ロックできる | 一般的に普及している |
デメリット | 思いつかない | SDIケーブルが4本必要 | 長尺が困難 普及の見込みが不透明 | 長尺が困難 ケーブルが高価 ロックできず、抜けやすい |
Quad Link 3Gとは、ハイビジョン画質(3G)を4つ合成し、4Kにしている技術です。
(解像度に関してはこちら参照)
要するに4本ケーブルが必要になります。
下記のイメージです。
ケーブルをさし間違えたら、キカイダーの様になります
(なりません。いや、なります。)
これが12G-SDIだと一本のケーブルで大丈夫です。
技術革新素晴らしい!
更に高画質な8Kはどうするか?
ご想像通りかとは思いますが、”Quad Link 12G” です。
では、8Kを一本で伝送するならどうするか?
ここまでくると、75Ω同軸のケーブルでは難しいようです。
その名も、“U-SDI” (すごい!)。光ケーブルになっています。
Storzは12G-SDIとDP。では他社は?
オリンパスは Quad Link 3G-SDIでのみ、4K出力が可能です。
12G-SDIが普及する前の製品であり、発売時期の問題かな。
先頭を切って4Kを出したオリンパスなので、これは仕方がない
提言:12Gに作り替えて発売しなおす!?日の丸製品応援してます!
Stryker 1688の4K出力はHDMIのみ。
これがすごく疑問。
どうして、12G-SDI(せめてQuad Link 3G)を付けなかったんだろう?
HDMIは、長くなると不安定になることが最大のデメリットだと思います。
15m程の長さになると、とてもとても怪しくなします。
これが4Kとなると、さらに厳しい。
長尺の4K HDMIケーブルとなると、先日、業界標準のカナレからプラスチックファイバ光HDMIケーブルが発売されました。
8Kに対応したU-SDIも光ファイバーでしたし、4K/8K時代の動画用のケーブルは光ファイバーが標準的になってくるのかもしれません。
というわけで細くて、 抜けにくくて、長い距離も楽々で、安い12G-SDI。
これイチオシです。
まとめ
- 12G-SDIでセッティングが極めて楽。 ほかの画像出力も充実。
- 本体がコンパクト
- ヘッドが軽くて手に負担がかからない。
- 被写界深度が深くて、手術中フォーカスを合わす作業があまりない。
Karl Storz 4K 完成度高すぎます。
ものすごく、落としどころがうまい製品だと思います。
殆ど12G-SDIの話になりましたが(汗)が、肝心の画質もとても素晴らしいです。
それに関しては次回にでも。
追記:そういえば、 Smith+Nephewの4Kも発売されるとか
画質も何も見ていませんが、ものすごくシンプル。
手術に耐えられる画質なら面白いかもしれません。
12G-SDIついてるかな~
院長 金子敏彦(かねこ としひこ)