4月13日(月)~17日(金)は医院を臨時休診します。
私や職員が感染したわけではありませんので、ご心配なさらずに。
当院には遠方から来ている職員も多いため、ご理解くださいませ。
手術を受けられた方で、緊急対応が必要な際は対応いたします。
さて私は、この臨時休診が新型コロナウイルスCOVID-19との闘い「前半戦・後半戦の境」と考えています。
臨時休診に入る前に「前半戦」での医院の変化をまとめてみました。
新型コロナとの闘い前半戦・後半戦
大阪府では4段階のフェーズに分けて色々な対策が考えられています。
4月9日から大阪府の患者数が92人/日となり、フェーズ2(67人以上/日)に入りました。
今後、フェーズ3, 4となり、さらにその先へと続いていきます。
2カ月ほど前から、社会情勢・医療事情は日々変化してきました。
来週後半あたりから行政も医療現場も、これまでとは違う対応が必要となってくるのは間違いありません。
新型コロナへの対応のみならず、今後の日本の形や医療のあり方、そして金子耳鼻咽喉科の今後も見えてくるのが「後半戦」だと考えています。
では「前半戦」の話題にうつります。
鼻の手術が出来なくなった!
何といってもこれです。激震です。
3月24日火曜日に「某大学病院が鼻の手術を中止した」と知人から連絡がありました。
その後、多くの病院にその動きが広がっていきました。
鼻の手術が、患者さんがもし新型コロナに感染していたならば、医療従事者(医師・看護師)への感染リスクがとても高いという事です。
全国の耳鼻咽喉科の医師の間で、とても大きな話題になり喧々諤々の議論が巻き起こりました。
・医療従事者への感染を防ぐ(患者さんへの感染ではありません)
・限られた医療物資(マスク, ガウン, 手袋など)の節約
つまり「有限である医療資源を、新型コロナの治療に使う必要がある」という事です。
当院としては、そういった社会的状況を総合的に判断した結果、
「4月6日(月)以降の手術の延期」を決定しました。
現在は日本全国で、鼻の手術ができるところが殆どありません。
決して、手術が患者さんに新型コロナを感染させるのではありません。
新型コロナでは、無症状の感染者が多く、手術する患者さんも例外ではないという事です。
となると、我々医療従事者が感染するかもしれないという事です。
それを防止するため、どうしても手術が必要ならば現在のところ、
「PCR検査で陰性」「胸部CTにて所見なし」が要求されます。
PCR検査が手軽にできない現状では、現実的には無理という事になります。
手術が決まっていたすべての患者さんにお電話でご連絡。
数カ月お待ちいただいた患者さんばかりです。
どのような反応をされるか心配でしたが、幸い皆様に状況をご理解いただきいております。
この場をお借りして、再度、感謝申し上げます。
今は、再開の目途が全く立たないことに頭を悩ましています。
可能な状況なり次第、速やかに手術を行えるように準備をしておきます。
N95を初めて使った
テレビなどで、N95マスクを知った方も多いと思います。
サージカルマスクはいつも使いますが、生まれて初めてN95マスクを使いました。
新型コロナの医療従事者への感染対策として、手術や外来でN95マスクの使用を推奨されることが多くなっています。
当初付け方に少し戸惑いましたが、想像していた息苦しいという感覚はありませんでした。
しかし耳介が少し痛くなりました。
マスクのみならず手術室での個人防護具は、どんどん重装備化。
N95マスク, ヘッドキャップ, ガウン, 2重手袋, ゴーグル, フェイスガード, シューズカバー等々、ありとあらゆるものを試しました。
外回りの看護師も重装備になってきて、なんだか物々しい雰囲気。
ほぼマックスまで重装備になった頃、手術が中止になってしまいました。
ネブライザーをやめた
耳鼻科と言えば、ネブライザーをしているイメージがあるのではないでしょうか?
環境感染学会が「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第1版」を2月13日にリリースしました。
その中でエアロゾルの発生しやすい治療での、新型コロナウイルス感染の可能性を指摘されています。
エアロゾル発生処置の例に「ネブライザー」という記載ありませんでしたが、
超音波ネブライザーは、薬液をまさにエアロゾル化し病巣まで到達させる治療です。
治療としての効果は見込めますが、薬液が「病原微生物」汚染を受けるとエアロゾルとともに微生物を噴出し、感染を広げる原因になります。
よって当院では「治療効果」よりも「院内感染のリスク」の方が高い。
と考え、2月26日より、ネブライザー療法を全面中止としました。
その後3月10日、環境感染学会の同ガイドラインver.2.1がリリースされました。
その中にはエアロゾル発生処置としてネブライザーと明確に記載されています。
早めに決断してよかったです。
医療従事者にはこのガイドラインは有名です。
ネブライザー中止の動きは全国的に広がっており、現在行っている施設は殆どないと思います。
ちなみにネブライザーによって感染するリスクのある「病原微生物」とは、新型コロナに限った話ではありません。
そのような観点から、当院では今後もネブライザー療法は行いません。
感染対策をさらに強化
新型コロナウイルスの感染経路は「飛沫感染」「接触感染」の2つです。
もうご存じとは思いますが、
「飛沫感染」
飛沫(くしゃみ、咳、つば など)と一緒にウイルスが放出され、他者がそのウイルスを吸い込んで感染します。
スーパーの開店前にマスクを求める行列を目にします。
ご存じの通り政府から各家庭に2枚配られるという事。
これによりマスクなしでの来院患者さんをゼロにできればいいのですが。
「接触感染」
感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、周りの物に触れ、未感染者がその部分に接触すると手に付着し感染します。
・余計なモノをなくす。
・なるべくモノに触れない。
・手が触れる場所をアルコールで清拭する。
といったところでしょうか。以前に比べて清拭作業が格段に増えました。
院内環境整備の勉強会をしたことを以前ブログでお伝えました。
振り返ってみれば、あのタイミングで勉強会をしたことが、とても役立っています。
勉強会の後に感染対策を強化し、
「消毒用アルコール」や、院内清拭用の「第4級アンモニウム塩」等の薬剤を比較的ふんだんに購入していたため、新型コロナウイルス問題が持ち上がっても薬液不足に困らずに乗り越えられています。
やはり普段から意識して知識を高めなければと感じた次第です。
昨年、勉強会を一緒に開催した他施設の方々に感謝。
医療連携を強化できた
自分で開業した医師が最も大事にしなければならない事。
それは「横のつながり」だと思います。
友人、元同僚、先輩、後輩…人生いろいろな出会いがあるものですが、
そのような今までのお付き合い、そして新しいお付き合いを大切にすること。
新型コロナに関しては、扇動的な情報がとても多いです。
良質な本物の情報を選び出すのは一筋縄ではいきません。
そんな中、本音を話せる「横のつながり」からの情報はとても貴重です。
・関西地区で日帰り手術をしている方々との情報交換
・遠方の知人との情報交換
・阿倍野区の開業医有志でつくったグループ
今回の問題では、とても有意義な情報交換をしています。
新型コロナウイルスが落ち着いた後には、以前にもまして強力な医療連携ができると確信しています。
日常生活
研究会、勉強会、友人との飲み会等々
人の集まるイベントが全てなくなりました。
最近になって、会議ソフトなどでの集まり?が増えました。
思ってもいない変化です。
- Microsoft Teamsで会議。
アレルギー性鼻炎の新しい治療法「抗IgE抗体・ゾレア」の勉強会を開催しようとしています。 - Zoomでのオンライン飲み会。
2度ほど開催。やはりCOVID-19の情報交換が主になります。オンライン飲み会は意外に面白いです。お店の終了時間も、終電も関係ないので延々続いてしまいます。
終了時間を決めることをお勧めいたします。 - NETDUETTOでのオンライン・セッション。
音の遅延などの問題もあり、とても違和感があります。しかしスタジオに行けない今、贅沢は言えません。バンド演奏には「目配せ」や「場の空気」が大事と再認識しました。
有名人の死
「志村けん」さんが亡くなりました。
あの頃はコロナの感染により亡くなられたのは、日本全国で50名程でした。
そのうちの一人が「志村けん」という事。
とても衝撃が大きかったです。
私は「8時だョ!全員集合」、兄は「オレたちひょうきん族」
で、ちょっとチャンネル争いをしたことも記憶にあります。
Manu Dibangoが同じくコロナの感染で亡くなりました。
とても好きなサックス奏者で、個性的なアルバムを多数リリースされました。
生で見てみたいミュージシャンでしたが、本当に残念です。
ドイツ留学時代に友人に教えてもらったのが、きっかけで知りました。
その友人とメールでManu Dibangoについて、やり取りした翌日に亡くなりました。偶然とは言えびっくりしました。
まとめ
コロナ騒ぎで医院の経営はボロボロです。
患者さんに「医院に来ないように!」と猛烈にアピールしているので、当たり前です。
しかし、こう書いていると悪い事ばかりではありません。
医療連携も強化できたし、院内環境整備も一気に進んだし。
ネブライザーをなくしたので、診療がシンプルになったし。
新型コロナウイルスの影響で、処置・手術等の制限も多いですが、
今できることは、来院された患者さんをできる範囲で誠実に治療すること。
新型コロナが落ち着いた後には、医療の質は以前より上がると思います。
「雨降って地固まる」
院長 金子敏彦