金子耳鼻咽喉科では、診療所で考えうる感染対策を徹底的に行い、またアップデートしています。
当院は手術をしますので、他の耳鼻科より人の血液や鼻汁などの体液をはるかに多く扱います。
そのため、洗浄消毒滅菌に必要なモノ・機器は積極的に導入しています。

滅菌洗浄機器

医療用器具洗浄機ジェットウォッシャー

jetwasher

器具の洗浄・消毒の為、当院はドイツ・ミーレの医療用器具洗浄機を導入しています。
食器洗浄機ではありません。医療機器専用の器具洗浄機(PG 8592)です。
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色々な会社から器具洗浄機は発売されていますが、良いものを選んで導入しています。
手洗い洗浄と違い専用の器具洗浄機のため、安定して確実に汚れを取ってくれます。
こちらのブログ記事も参考になさってください

オートクレーブ滅菌機

EOG

写真の右側がオートクレーブ滅菌機
湯山のYS-A-C006J
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高圧高温で行うのがオートクレーブ滅菌機で、ほぼ全生物を死滅させることができると言われています。
滅菌温度は、135/121/115℃を選択できます。

EOG滅菌機

先ほどの写真の左がEOG(エチレンオキサイドガス)滅菌機
東邦のケミス・クレーブCT-380
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鋼製小物と言われる金属の製品や、硬性内視鏡は先ほどのオートクレーブで滅菌できますが、プラスチック製品などは高温に耐えられません。
そのようなものをこのガス滅菌機を使用して滅菌します。
半年に一度の作業環境測定が必要で、当院でも行っています。

オートクレーブ、EOGがあるため、全ての医療機器・材料を外注することなく当院で滅菌することが可能です。

軟性内視鏡・洗浄消毒機

普段外来で頻繁に使う、軟性内視鏡の洗浄機です。
精研社のESPAL-V(エスパル・ファイブ)を使用しています。(2021年7月にESPAL-IIIbから買い替え)
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内視鏡の挿入部だけでなく、医師が操作する部分も含めて丸洗いできる機種です。
内視鏡洗浄ガイドラインでは操作部を含めて全部洗うことが推奨されています。
挿入部だけ洗浄機、操作部は手洗いだと洗浄がおろそかになる可能性があります。
1,ブログ記事1(内視鏡の洗浄に関して)
2,ブログ記事2(ESPAL-Vへの入れ替え)

当院はこの内視鏡洗浄機を2台使用しています。
1台だけですと、洗浄が間に合わないときに「手洗い洗浄」になってしまうかもしれません。
それでは、せっかく高性能な洗浄機器を入れた意味がありません。
そのために2台導入しています。
外来中は2台ともフル回転していますが、それでも間に合わないことがあります。
そのような時でも、「手洗い洗浄」にならず問題なく診察が行えるように多めに軟性内視鏡を購入しています。
合計8本。特殊なものも含めると合計10本あり、用途によって使い分けています。

当院の軟性内視鏡の環境は令和元年の耳鼻咽喉科専門医講習会で紹介されました。

院内の環境に関して

準備室の水栓に関して

footswitch

医院の洗浄・準備室にはシンクを2つ設けています。
天板の高さやシンクの深さは重要で、洗浄者への「水はね」を防止する設計をしています。
「水はね」は、あまり重要視されず感染対策として話題に上ることはありません。
しかし、私は人の体液が付いたものを洗浄する以上、対策が必要であると考えています。
また体液が付いたまま、水栓を触ることも清潔とは言えません。
その対策として、TOTOのフットスイッチユニットを導入しています(図の矢印)。
これにより水栓をさわることなく、水をon/offできるようになっています

院内環境整備に関して

院内の環境整備は大変むつかしい問題です。
診療所は病気の患者さんが来られますので、ある意味感染症の温床です。
院内感染対策で上記のような洗浄滅菌器具をそろえていますが、床やドアなどいたるところに感染源はあります。

金子耳鼻咽喉科では、
・エタノール
・第4級アンモニウム塩含有の医療施設用洗浄剤
等を使用して普段の清拭を行っています。

第4級アンモニウム塩 について(PDF)
血液もよく落ち、洗浄できる場所を選ばないので環境整備に大変有用です。
下記薬剤を使用しています。
普段の清拭にはサラヤのサラサイド
床などの広範囲の清拭には花王の医療施設用クリンキーパー

当院がキッズスペースを設けていない理由

患者さんにアンケートを取ると「キッズスペースを設けてほしい」という意見が必ず出ます。
診療所のキッズスペースに関しては様々な考え方があるとは思います。
その点を理解したうえで、あえて申し上げますと、キッズスペースは患者間感染の原因になると私は考えています。
特に感染症を扱う科目(もちろん耳鼻科を含みます)においては。
このような観点からあえてキッズスペースは設けていませんし、これからも作る予定は全くありません

当院がネブライザーをしない理由

令和2年の新型コロナの世界的な流行をきっかけに、院内感染対策がより重要視されています。
超音波ネブライザーは薬液をエアロゾル化し病巣まで到達させます。
治療としての効果は見込めますが、
一方、薬液が「病原微生物」汚染を受けるとエアロゾルとともに微生物を噴出し、感染を広げる原因になります。

「病原微生物」とは、新型コロナウイルスに限った話ではありません。
様々な院内感染対策の指針でも、管理を厳密にしないと「ネブライザーはエアロゾル感染の原因となる」と明記されています。
以上の理由により「治療効果」よりも「院内感染のリスク」の方が高いと考え、当院ではネブライザー療法をしていません。