手術症例の増加に伴い、手術機器を1セット増やしました。
新たな鉗子で気分良く手術をやっていたのですが、、、何か違う。
いつもなら触れるはずのところが、触れない。
同じ機械を買ったはずなのに。
さっそく比較してみました。色々な鉗子に変化がありました。
今回は第1回として「慈大式細截除鉗子弱弯前開(fine cutting forceps curved up forward)」を比較検討してまいります。
「截除」は「せつじょ」と読みます。
多くの耳鼻科医は習慣的に「さいじょ」と呼ぶことが多いですが、学会で「さいじょ」と言うと注意されてしまいます。
話がすこし脱線しました。
では早速、新旧鉗子対決をしてまいります。
まずお断りしておきますが、カタログ上は同じ製品です。
弯曲の程度が変わっている
少しだけ弯曲しているのが特徴ですが、弯曲の程度が変わってしまっています!!
新しいバージョンは弯曲が強くなっています。
弱弯→強弱弯といった感じでしょうか。
慣れた道具の角度が変化すると、違いはかなり大きく感じ、手術中の感覚を狂わします。
少々太くなっています。
新しい方は「太い」です。
先端に向かう部分は旧規格は約3mm、新規格は約3.5mm。その差約0.5mm
ハンドル部が旧規格は約3mm、新規格は約4mm。その差約1mm
大きさの違いは、そのまま持ったときに「ゴツい」と感じてしまいます。
旧バージョンはいい感じで面取り(角を取る)されており、それも手に馴染む理由になっているようです。
スパイラルが良いんです
この違いわかりますか?
写真左の昔のバージョンは途中スパイラルしています。新規格はネジ止め。
新バージョンは何だかグラグラ。先の方の動きも違います。
説明が出来ないのですが、どうやらスパイラルしているのがミソのようです。
なぜ変わったのか?
他にも組織を切除する時の感じも微妙に違います。残念ながら古い規格の方が切れます。
どうやら先端自体の問題もあるようです。
旧バージョンと新バージョンを比較すると、旧バージョンに圧倒的に軍配が上がります。
慣れの問題もあるので、評価をするのはまだ時期尚早かもしれません。
変わった大きな理由は、技術を持った職人さんが引退されたからだそうです。
技術の伝承が上手くいかなかったらしいです。
特にスパイラルさせるのは、とても難しい技術だそうです。
この手の手術用鉗子類は、例外はあるものの総じて日本の鉗子は優れています。
それも職人さんの技術あってこそというのを今回改めて思い知りました。
唯一無二の技術にささえられた機械には、値段が高くても絶対に価値があります。
この1年程、職人さん不足で鉗子が手に入りにくくなっています。
この新規格の鉗子も、購入できたことだけでも贅沢は言えません。
新しい職人さんが、素晴らしいmade in Japanの鉗子を作っていただくことに期待しております。
本気で応援しています!
今回の企画マニアック過ぎますか!?
院長 金子敏彦(かねこ としひこ)