オミクロン株の大流行の影響でブログの更新が滞ってしまいました。
感染力が強く、しかし症状が軽く出るだけにとても厄介な事はご存じの通りです。
職員・職員家族の健康(コロナ感染)にとても神経質になります。
重症化しにくいのは良い事ですが、出勤が出来なくなるので運営面での段取りがとても大変です。
どの企業も頭を悩ましていると思われます。
コロナ後に起こる耳鼻科の病気?
最近、コロナに感染してから数カ月にわたって「咳」や「ノドの違和感」が続くと来院される方が見られます。 多くが「コロナ罹患後症状」と言われている患者さんで、この先どうなるのか・・・と大変不安な様子でした。
拝見すると副鼻腔炎をおこしていたり、咽頭炎があったり。耳鼻科的な治療で根治する方が少なくありません。
自験例でも症例数がまだ少なく、学会での報告もこれからだと思います。
今後このような患者さんが増えてくるのではないか?と思った次第。
そこから思ったことを今回は書いてみたいと思います。
新型コロナ「罹患後症状のマネジメント」に思う事
新型コロナ感染後に後遺症が残る事があるのは御存じの方も多いと思います。
昨年末「罹患後症状のマネジメント」(PDF)が「新型コロナウイルス感染症治療の手引き」の別冊として発行されました。この中に、咳・喀痰は「呼吸器症状」に分類されています。
冊子中ではこれらの症状を呼吸器内科でフォローすることを前提に記載されています。
空気の道「気道」は大きく上気道・下気道と分けれらますが、呼吸器内科(下気道を扱う)の観点からしか記載がありません。
ここに耳鼻咽喉科(上気道を扱う)の文字は全くありません。
有名な嗅覚・味覚症状にだけ耳鼻咽喉科は登場します。
もしかすると、コロナ後に「咳」「喀痰」等の症状が続くが、肺には問題なく医師も診断に首をかしげながらも「コロナ罹患後症状」として治療を受けられている患者さんが多いのではないか?と危惧しています。
新型コロナの流行が始まってから、たったの2年です。
ましてや「コロナ罹患後症状」 に関しては医学的に未知の事が多いのです。
しかし公的な意味合いのある「罹患後症状のマネジメント」 に 咳・喀痰に「耳鼻咽喉科の病気」の可能性である記載が無いのです・・・
ここに一言記載するだけで、呼吸器内科の医師が耳鼻科の病気(上気道)を念頭に置いて、診断を進める可能性が高まります。診断に苦慮した時、もしかしたら耳鼻科(上気道)受診を勧めることで病気が見つかり治せるかもしれません。
記載のない理由はわかりませんが、冊子に耳鼻咽喉科医が深くかかわってないのかもしれません。
いわゆる「風邪」の原因の多くがウイルス性上気道炎ですが、原因になるウイルスがいっぱいある中で重症化しやすく死ぬかもしれないので社会的な問題になるのが、新型コロナやインフルエンザ。
ウイルス感染の患者さんが細菌感染を合併して副鼻腔炎を起こしたりする事は耳鼻科医ならば日常からよく経験していることです。
感覚的に、コロナの患者さんが副鼻腔炎を起こすことは何ら不思議ではありません。
新型コロナの経営への影響
経済産業省の報告によると、新型コロナは診療所の経営に大きく影響を及ぼしています。
中でも小児科と耳鼻咽喉科は特に影響が大きかった様です。
でも患者さんの受診が減っても、患者さんの健康に問題なかったなら、もともとそんな受診は必要なかったのでは?と考えるのが普通ではないでしょうか。
過剰な受診抑制で病気が悪化してしまうのは良くないですが、多くの病気は勝手に治るものです。
私は患者さん自身が、自らの病気を考え自立することを日頃から求めているし、そうなってくれることが一番良い事だと考えています。
その上で、治らない病気をどうするのかが我々プロの仕事だと考えています。
耳鼻咽喉科医療の本質を考える
今後、医療費抑制の一環もあり様々な薬が保険適応外になるかもしれません。
そんな事で、アタフタするような診療所で良いのでしょうか。
「コロナ罹患後症状 」と言われて治らない患者さんが来られた時、診断できるだけの設備があるだろうか。
私は鼻副鼻腔を専門にしていますのでそっちの話になりますが、副鼻腔炎を深いレベルで診断するのは簡単な話ではありません。
パット鼻を見ただけで「副鼻腔炎がない」なんて判断できません。
電子スコープ(FAQ:鼻から挿入するカメラは何を見ているのでしょうか?)やCTスキャンを使わないと、確実に診断することは無理です。
電子スコープだけでわかる事もありますが、見た目では問題ないのにCTを撮影すると結構悪い副鼻腔炎が見つかる事はざらに経験します。
深いレベルで診断をするには設備が絶対に必要です。
覚悟をもってやらないとなりません。耳鼻咽喉科医の責任は重大です。
このような患者さんを見逃してしまうと「コロナ罹患後症状 」と最終判断されてしまうかもしれません。
診療所の「売り上げが下がった」ならば、ではどうするか?を考えなければなりません。
耳鼻咽喉科医療の本質的なレベルで不要なこと・必要な事が、炙り出されているのが「今」だと思います。
コロナ前と同じ医療で患者さんが戻ってくることを祈るのではなく、医療行為そのものを根本から見直す事が必要だと思っています。
設備を整え、しっかり診断する耳鼻咽喉科のニーズがますます求められるのではないでしょうか?「コロナ罹患後症状」の話に戻りますが、内科では診断のつかない患者さんが耳鼻科を紹介され診断・治療をして治れば、患者さんにとっても耳鼻咽喉科にとっても価値のある事だと思います。
院長 金子敏彦(かねこ としひこ)